【医療機関で働くスタッフさんへ伝えたいこと】

=医療チームビルディングトレーナーの島田=

私が医療機関に対してこの活動を続けているのには、理由があります。

 

25歳の時、それは私が企業で勤めていた頃の話です。

 

母が癌になったことを知りました。

 

ステージⅡで患部を除去すれば癌進行のリスクは避けられる状態。

 

しかし、本人は癌の切除をすることを手術当日まで拒んでいました。

 

 

なぜなら、癌になった場所が「舌」だったからです。

 

 

手術をすれば舌が半分無くなる。

移植をするものの舌を半分切ったあとのさまざまなリスク。

 

 

主治医の先生から術後の話を聞いていました。

 

 

 

術後、やはり今まで通りの生活は送れなくなりました。

 

話すことはできますが、今まで通りの話し方ではなくなりました。

 

 

 

唾液も減り、どこに行くにしても水は手放せません。

 

飲み込むのに時間もかかりスピードもゆっくり。

 

味覚もかわり他の人と食べるスピードや嗜好が合いません。

 

次第に母は初対面の人と話すのも抵抗を感じるようになりました。

 

 

 

 

術後、私は一緒に病院へ行くことが増えました。

問診票を記入し、受付さんに渡す。先生やスタッフさんに主訴を話す。

先生が聞き取れないところは私が通訳をし、説明をする。

 

 

 

 

ある日、とあるクリニックさんへ行きました。

 

その先生はもともと総合病院で癌の外科手術もされていたそうで

母の術後の生活での苦労や再建手術の経過なども含め、

わたしたちの話をゆっくり聞いてくださいました。

 

 

 

 

 

話を聞いてくれる先生の姿勢や「癌」という共通言語があるおかげで

母も嬉しかったのか、いつもより安心しているように見えました。

 

 

 

 

そして主訴や痛みなどについて一通り話したあと、

先生が母にある言葉を言ったことで表情が一変したのです。

 

 

 

 

 

「あなたは舌癌の患者さんの中でも幸せだね」と。

 

 

 

 

母も私も最初は何のことだかわからなかったので、

キョトンとしていると先生は続けてこうおっしゃるのです。

 

 

 

 

「こんなにうまく話せる人はいないよ」と。

 

 

 

 

 

母はその言葉を聞いた瞬間、

 

今まで見せたこともない嬉しそうな、だけど少し照れくさいような顔をしていました。

 

 

 

「そう・・ですか・・・ねぇ・・・?」と母は言いました。

 

 

 

 

 

 

それをみたいた私は

 

 

 (よかった・・・・)

 

 

 心からそう思いました。

 

 

 

 

 

そして医療機関の人の言葉は、

 

患者さんにとってスゴイ影響力を持っているんだと

 

改めて感じたのです。

 

 

 

 

私は今まで母に励ましの言葉や勇気づける言葉を選択してきたつもりでした。

 

ですが、どんな言葉をかけても母の気持ちは晴れることはありませんでした。

 

 

 

 

しかしその日、先生がかけてくださった、

 

たった一言で、

 

凝り固まった母の気持ちは変わったのです。

 

 

 

頑なに変わらなかった気持ちを変えてくれたのは、

 

薬でもなく高度な技術ではなく、

 

先生の温かい言葉だったのです。

 

 

 

 

そして、帰り際。

 

受付へ行きお支払をしていると、

 

今度は受付の人が私に声をかけてくれました。

 

 

 

 

 

「あなたは偉いね〜」と。

 

 

 

その方は私が母の代わりに問診票を書いていたり、

診療室での出来事を知っていたようです。

 

 

 

 

今まで様々な医療機関に行きましたが、

そんな温かいお言葉をかけてくれる受付さんに

私は出会ったことがありませんでした。

 

 

 

 

 

私自身はどこも悪くないのに

病院へ行く事自体があまり前向きでなかったのです。

 

 

 

しかし、その日、受付さんがかけてくれた

「あなたは偉いね〜」という言葉一つで

重たかった私の気持ちはスッと軽くなりました。

 

 

 

嬉しくて、あたたかくて、

不思議な感覚でした。

 

 

 

 

こんな医療機関が世の中にたくさんあったら、

患者さん本人も

そして支える家族側もどんなに救われるだろうと強く思いました。

 

 

 

 

医療機関で働く方々の言葉の持つ影響力ってスゴイということ。

私はひょっとしたら薬より効果があるんじゃないかと思っています。

 

 

 

 

患者さんの「患」の字は

 

「患う」や「心を苦しめなやます」という意味だと聞いたことがあります。

 

まさに心に串が刺さっている状態だと思うんです。

 

痛い・苦しい・わかってほしい・聞いて欲しい・・。

 

 

家族側だったら

 

知ってほしい・助けて欲しい・症状を和らげて欲しい・・。

 

 

だからその心に刺さった「串」を

患者さんに対する声掛けや一つひとつの表情やコミュニケーションで

そっと取ってあげれるような医療機関さんが増え、

患者様も家族も医療機関の方々もお互いに心地よい状態を作りたい。

 

 

 

 

それを実現するために大切なこと、

それは

 

医療機関で働く方々が、光り輝く職場>を作っていくことが大事だ!

と思ったのです。

 

 

 

一人だけがホスピタリティあふれた方でも、

そのチーム全体の人間関係がよくない状態だとしたら、

心の余裕がなくなり、なかなか患者様やチームのメンバーに寄り添う言葉がけや言動はできないと思うのです。

 

 

 

 

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

(マザーテレサ)

 

 

 

人は溢れたものしか与えることはできません。

 

 

 

犠牲心や我慢から出た言葉は実際に働く女性スタッフさんとお話をしていると、

働くことに無価値感を感じていたり、自己肯定感が低く、

本当はとても素晴らしい能力を持っているけど、

周りを否定したり毒づく人やお局様化してしまっている方もいます。

 

 

私もその一人でした。

 

 

 

私はそんな方々へ勇気を与えていきたいのです。

 

 周りを否定したり毒づいてしまうのには理由があります。

 

本当はそんなことをしたくないのにそうなってしまっているだけ。

 

 

 

 

「人を変えることはできない」と人は言うけれど、

 

気づくきっかけがあるだけで人は「自分を変えることはできる」と。

 

 

 

だから私は医療機関の方々でもしも

落ちこんでいたり無価値感を感じている人がいたら

気づきのきっかけを作るお力添えをしたいのです。

 

 

私や母の心を医療機関の方の言葉で救われたように。

 

 

 

医療機関で働く皆さんには、とっても素晴らしい力があるのだから。

 

 

 

患者様だけではなく働く仲間にも心地よい声かけや行動ができるように。

 

 

私は、医療人として働くことは素晴らしいことだ!という仕事観を

スタッフさんへ伝え続けることで、

言葉や行動が変わっていくことを信じこの活動を続けています。

 

 

医療チームビルディングトレーナー

島田 菜々絵